目次
トレーニングに励んでいますか!過酷な高負荷を掛けていますか!
シンドイ思いをして日々の鍛錬に努めていますか!!!
なんて暑苦しいこと言ってりゃそれだけで億劫になるなんて人もいらっしゃるかと存じます。
そりゃ辛いことを推奨されりゃ「よしてくれよ…」となっても当然です。
トレーニングやら仕事やら勉強やらなんでもかんでも、好んでやっている人ならいざ知らず、というかぜんぜんシンドイに入らないわけですが、「シンドイなー…」と思いながらやってる人にとってはどれもこれもやんなっちゃうものだと思います。
「できれば毎日なんにもせずに楽をして過ごしたいなあ」「月曜日がくるの嫌だなあ」「ずっと寝て過ごしたいなあ」と楽ーに過ごしたいって気持ちが沸き起こってくるという人も珍しくありません。
家猫ちゃんばりになーんにもしないで衣食住が提供されればどれだけ良いことか!と夢想した経験はだれしもあることでしょう!
しかーし!本当にそれであなたいいのですか!?
と、自己啓発のセミナーやら怪しい壺でも売られかねない勢いで迫ったらただただ恐怖の対象になってしまいそうですが、そういうわけではありません。
別に無理に辛いことしろとかそんなこと言うつもりは毛ほどもないですよ!
とはいえ、もしも衣食住が完全に保障されていて、なーんにもしないでせいぞな確保されていたらどうなっちゃうと思いますか?
全てが用意されて自力では何もしないでいい、する必要がない、その環境は一見夢のようですが、もしその夢が実現”してしまったら”生物とはどうなるのでしょうか?
今回はトレーニングもせず、働くこともせず、健康のことも考えなくていいことは、はたして生き物をどんな風にしてしまうのか。
そんな話をしていきましょう。
楽をし過ぎたらどうなる?
なんとなくの想像からのスタートでいきましょう。
さっきも言ったような楽の極みみたいな生活をするのは、はたして幸せなのか。
「最高の幸せじゃねえか!!」という人はOK!やりましたね!
ってな感じですが、単純にそうとも言えないんですよね。
というのも人間は座りっぱなしや横になりっぱなしだと、死亡リスクがごりごり上昇してしまいます!
この時点で不穏ですね!
寝過ぎると死亡リスクが高まる
たとえば睡眠時間が長過ぎると、死亡リスクが上がるという研究結果は有名。
Journal of Epidemiologyに2020年2月に掲載された論文の発表によると、男女合わせて99860人(男性46152人、女性53708人)からの回答を元にした調査アンケートの結果から、睡眠時間が7時間のグループと10時間のグループで調べたところ、とんでもない結果が出たのです。
なんと男女ともに睡眠時間が長過ぎると命に関わる問題があることが判明!
男性では1.8倍、女性だと1.7倍も死亡リスクが上昇したのです。具体的なメカニズムが解明されていないものの、長期睡眠時には無呼吸時間が多くなることによる死亡リスク増加の可能性などさまざま考えられており、実際に長時間睡眠では病気を持っている人も多いのです。
寝ないのはもちろん大問題ですが、必要以上に眠ると死ぬ可能性が高まるってのはビックリですね!
座り過ぎると死亡リスクが高まる
「じゃあ座ってりゃいいのか!?」というと、そういうわけにもいきません。
ほかにも、オーストラリアでの大規模な研究では、座りっぱなしの死亡リスクの危険まで下記らかになっています。
オーストラ人22万人以上を対象にした研究結果によると、座っている時間が長ければ長いほど、がんや心疾患、肺炎などにかかりやすくなって死亡リスクが上がると判明!!
これは長時間同じ姿勢でいると血流が滞り、血流低下によって全身の臓器や組織に悪影響を及ぼすことが理由の一つとして考えられます。
寝てても座ってても死ぬってエグいですね!!!!
動かなければ死につながる
このように身動き取らずにダラダラしていることは生き物としても非常にヤバいことが判明しています。
なので楽ーに過ごすことは生命存在として考えても幸福どころか天国か病院送りになることを約束されているようなものなのです。
実際なにもしないで休日を過ごすとメンタルは危険に陥っていきますからね。ダラダラ過ごしていたら1日を無駄に過ごしてしまったー、と絶望するのは、あれは新しいことを行わないで電源オフ状態が続くことで起こってくるものです。
というわけで人間生物にとって、なにもしないことは幸福から逆走してしまう危険な行為だというわけで!
楽園を作ってみた
でもってこのなーんにもしなくていいというのを実際にやってみたらどうなるかと、という生物実験まで行われたという話があります。
半ば都市伝説化しているようなマウス実験です。その名も楽園実験。
名前だけ聞いたらハッピーなのか猟奇漫画っぽいのかよく分からないですが、少なくとも良い予感がしない単語ではありますね。
この実験はかなり興味深いもので、生物にとって生存を脅かす脅威を排除し、かつ生存するための住環境や食事を充分に用意すればいったいどうなるかということを調べようとしたもの。
生物界は常に死と隣り合わせです。人間なんてちっちゃなストレスやら悩みとかが日々あったとしてもそんなものは自然界の脅威と比べればチリみたいなもので、生き物は天敵が存在すれば速攻で天国の直行便がお迎えにやって来ますからね。
自然界担当の死神になれば「おい人間の部署行かせてくれよ!!」とその日の夜はヤケ酒確定でしょう。
仏教においては生まれ変わって「どんな生き物になりますか」「どの世界で生きますか」という行き先に『六道』というのがありますが、動物達の世界である畜生道に比べたら人間道はマシな世界として扱われてますからね。
余談はさておき、では死亡リスクとなる天敵やらなにやら、生存の脅威となるものをすべて排除した場合、生物はいったいどういう感じで社会を形成していくのか。
そうです。単体の研究ではなく、社会形成がどうなるのかを見た実験です。単体ならおうちて買ってるペットたちを見てればまあいいわけですからね。
大規模な楽園を作れば、いったい生物はどんな社会を作り出し、一体どのような結末を迎えるのか。
楽園の未来とは、いったいどんな世界なのでしょうね?
地獄の楽園
楽園に住む生物はどのような社会を形成し、そしてその生物たちはどのような生態となるのか。
1900年代に行われた動物実験の名は「ユニバース25」。ユニバースは宇宙や全人類を指す言葉ですね。
1986年7月、アメリカはメリーランド州郊外の農村地域で、あるマウス実験が行われました。
楽園の観察を目的としたユニバース25は、動物行動学者のジョン・B・カルフーン博士によって実験の指揮が執られました。
楽園の観察。なんだか穏やかなのか不穏なのかよお分からん説明ですが、実験内容はこうです。
生存に最適な環境にマウスを住まわせると、どのような社会形成がなされるのか。
楽園の構造
まさにマウスにとっての楽園を作り出そうという計画では、カルフーン自身の論文に記述している5つの脅威を挙げています。
住処からの追放・食糧不足・悪天候・病気・捕食者。
どれも生存が危機にさらされる危険因子ですね。人間にとってもこれは同じこと。捕食者の項目が気になるところですが、ゆえに想像作品では生物の上に捕食者を置くケースもありますね。グロい余談です。
マウスの実験ではこれら5つの脅威を完全排除して、マウスがなーんもしなくても平穏無事に暮らせる環境を作り出しました。
具体的な楽園の構造はこうです。
256のエリアと、16の巣穴を設け、最大3000匹以上のマウスを同時に収容できるまさに巨大な花園を作り上げました。SF作品で出てきそうな設定だな!!
さらに食料や水は無限に用意して常に与え続け、さらに病気も完全に予防。
気温も最適に保たれ続け、もちろん天敵となる存在はどこにもいません。周囲では人間という大天敵に見張られ続けていますがね。
楽園開始
1968年7月9日、実験スタート。
最初に楽園に放たれたのはオスメス4組の8匹のマウス。幸せカップル4組いらっしゃあい!!
はじめこそ新たな環境に戸惑っていたマウスたちはじょじょに慣れていき、住処としていきました。
このマウスたちの平均寿命は800日、人間でいえば80歳まで生きる長寿ねずみたちです。
逆に言えば、ねずみたちの10日が人間の1年に該当するため、社会形成を観察する指針となったということですね。
楽園では個体数が激増していきました。最初のマウスは104日日目に誕生し、そこから約55日目で倍増。
個体数が爆発的に伸びていき、315日目には社会形成期といえる段階に達しました。
そうです。
楽園に社会が形成されました。
楽園の社会
個体数が爆上がりするにつれて、楽園では不思議な現象が起こりました。充分な広さを誇る敷地内で、多くのマウスは特定エリアに集中して餌を食べていたのです。
この食事を通じて、マウスたちに群れの概念が生まれていったのです。
これが社会形成のスタートとなります。
グループができるのは興味深い現象ですが、もう一つの現象が見られたのです。
格差です。
社会が形成され、格差が形成される。
興味深いですね。
しかし不思議です。どうして無限に食事が与えられる環境で格差が生じたのか?
住居にはまだまだゆとりがあるが、各エリアの居住数に違いが見られ始め、スペースによっては13匹のところから、100匹以上のところまで居住密度に差異が生まれ出したのです。
各エリアに同じくらいの数で散らばればいいものの、なぜ格差が生じるほどの過密エリアが生じたのか。
面白い。
この不毛なエリア争いの結果、無理の中での権力争いや縄張り争いが生じました。
いやスペースいっぱい余ってんだろうが!って感じですよね。
しかし完全にボスのねずみも生まれ、その下には交戦的で常にほかのマウスを争うタイプが生まれました。
しかし個体差があり、格差が生じるのは自然界でも見られる現象。
ここまではね。
楽園での異常個体
その下にはなんと浮気をしまくる個体が発生しました。
この浮気っぷりがとんでもなく、オスだろうがメスだろうが果ては子供だろうがなんでもかんでも求愛するというブチ壊れっぷり!
その下にはストーカーまで発生します。
常に相手を追い回すため浮気野郎よりもある意味タチの悪いマウスですね。
そしてカースト最下位に生じた個体は。
引き篭もりです。
「は?」
という話ですが、非社会的で孤立する個体が発生し始めたのです。
巣に篭ったまま、ほかのネズミと関わり合うこともせず、どころかほかのネズミが眠ってから行動し始める。
引き篭もり人間か!?!?
というようなまごうことなき教科書通りの生態になったのです。
これら浮気癖、ストーカー、引き篭もり陰キャは自然界では存在しない役割です。
というのも言い方アレですがこんな奴らは住処を追われますからね。
自然界では別の群れでボスや闘争心強めの通常のマウスとして社会の一員となるか、途中であの世にいくかのどっちかですが、ここは楽園。
追放も死もありません。
楽園には終わりはないのです。
楽園に生じた異変
ある時期になると個体数の増え方に変化が見られるようになりました。
爆発的に増えていたネズミの数が滞り始めたのです。
なぜなのか?
外敵もなく住処も食料も十分に与えられていたマウスたちになにが起こったのか?
子供の死亡率です。
なんと浮気癖やらストーカーのマウスたちの乳児死亡率が90%を超え始めました。
ちなみに戦うマウスたちの子供は死亡率が50%。
なぜこんな違いが生まれたのか?
それは浮気やストーカーだけをする個体が、戦わない個体だったからです。
ここから、どんどん怖い話になっていきます。
自らのためにも戦わず、当然子供のためにも戦わない使えないオスどもに代わって、母は子供を守るため攻撃的になっていきました。
しかしこの攻撃性は子供にまで及び始めたのです。
子供は凶暴な母から離れることになりますが、カースト最下層の引き篭もりになるか、もしくは最悪、なんとほかのマウスに食われることになったのです。
楽園に異変が。
楽園?
ここが楽園???
楽園の終焉
楽園開始から560日が経過した頃には、死亡率と出生率が一致して個体増加が止まりました。
そして。
600日には乳児の死亡率が100%になりました。
920日目。
妊娠するマウスがいなくなりました。
子供がいなくなりました。
それからは個体数は減る一方です。
しかし、個体が増えすぎたことで楽園に異変が生じたなら、個体が減れば再び楽園を取り戻せるのではないでしょうか?
そうはなりませんでした。
元々ボスとして君臨していたマウスすら、楽園が続けば続くほど。
カースト最下位の引き篭もりになっていたのです。
社会に生殖機能が存在しなくなった楽園。
実験開始から1780日目。
最後のオスが死亡し。
楽園には。
だれも。
いなくなりました。
「いっ……」
いやあああああああああああああああああ!!!!!!!!!
ユニバース「25」
はい、ホラーな話はいかがだったでしょうか。
最後にとっておきの怖い話ぶっこむと、ユニバース25の「25」。
これって25回目の実験ってことです。
じゃあ、24回の結果はどうだったのか?
すべて同じでした。
すべて。
同じでした。
すべて。
楽園は。
滅びました。
……こわーーーい!!!
ってな感じで、まぁこの実験結果はなかなか興味深いという感じで。
これが人間そのままに当てはまるとはいいませんが、しかし面白いですよね?
生存が脅かされないでなんでも不自由なく揃っている社会って、人間の社会にも言えるのでは?
そこでは引き篭もりの個体なんかが発生していますよね?
もちろんマウス実験と人間の実社会を完全に同一視はできません。
ですが。
戦いが無い日々っていうのは、本当に幸せなんでしょうかねえ?
トレーニングしよう勉強しよう楽しもう!
ってわけでなに不自由なく刺激もなくじっとしてるだけだとヤバそうなので!
トレーニングしましょう!勉強しましょう!
他人と関わりましょう仲間と過ごしましょう!
あれこれ悩みがあても乗り越えましょう!他人に助けてもらいましょう!
そっちの方がぜんっぜん楽しいですよ!
楽 園 に 比 べ り ゃ あ ね 。